「な〜るほど!の熱学」 第1版第15刷の正誤表
2018年の国際度量衡総会で合意され,2019年5月20日に施行された国際単位系(SI)では,基本的な物理定数(真空中の光速度,素電荷,プランク定数,ボルツマン定数,アボガドロ定数など)を定義定数として,それらが不確かさのない確定した数値になるように基本単位の大きさを決める方式を採用した。
時間の単位秒(s)と長さの単位メートル(m)はすでにその方式に従って定義されていたが、質量、温度、物質量、電流も基礎物理定数に基づいて定義されることになった。
質量の単位1キログラム(kg)は従来は国際キログラム原器の質量と決められていたが,新しいSI単位系ではキログラムは物理定数(プランク定数)に基づいて定義される。
温度の単位1ケルビンは,これまで水の三重点(氷と液体の水と水蒸気が平衡に共存する状態)の温度の 1/273.16 と定義されていたが,新しいSI単位ではボルツマン定数(p.\,96 式(5.12)参照)に基づいて定義される。
物質量の単位1モルは,これまで炭素12の 0.012 g に含まれる 12C 原子数に等しい数の構成要素を含む物質量と定義されていたが、新しいSI単位ではアボガドロ定数に基づいて定義される。
このSI基本単位の再定義に伴い p. 2 の温度,物質量の単位の記述を次のように訂正する。
- 温度:熱力学温度の単位はケルビン(Kelvin, 記号 K)。1 K はボルツマン定数が 1.380649×10-23 J/K となるように定義される。
- 物質量:物質量の単位はモル(mole, 記号 mol)。1 mol の物質量は 6.02214076×1023 個の要素粒子を含む。この数をアボガドロ数といい,
NA=6.02214076×1023 mol-1
をアボガドロ定数という。なお mol を使用するときは構成要素が何であるか指定しなければならない。
なお,上記の熱力学温度の単位の定義により p. 60 の「3.3節 熱力学温度目盛」の記述は理論的には不要となる。式(3.3)の3行下の「国際単位系では」を「実用的には」と読みかえて下さい。水の三重点の温度(273.16 K)はこれまでは誤差のない確定値であったが,今後は測定によって決定されなければならない。今のところ 273.16 K の不確かさの割合は 3.7×10-7 である。
裏表紙見返しの「基礎物理定数およびその他のデータ」の物理定数の値も最新の基礎定数表(CODATA2018推奨値)によって更新しておく(一部変更のない定数を含む)。
*印は定義定数(国際的な合意によって定義された定数)であることを示す。
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物理定数 |
2014推奨値 |
2018推奨値 |
単位 |
真空中の光速度  * |
2.99792458×108 |
2.99792458×108 |
m/s |
万有引力定数 |
6.6741×10-11 |
6.6743×10-11 |
N·m2/kg2 |
プランク定数  * |
6.6260700×10-34 |
6.62607015×10-34 |
J·s |
素電荷  * |
1.60217662×10-19 |
1.602176634×10-19 |
C |
電子の質量 |
9.1093836×10-31 |
9.10938370×10-31 |
kg |
陽子の質量 |
1.67262190×10-27 |
1.672621924×10-27 |
kg |
統一原子質量単位 |
1.66053904×10-27 |
1.660539067×10-27 |
kg |
アボガドロ定数  * |
6.0221409×1023 |
6.02214076×1023 |
mol-1 |
気体定数 |
8.314460 |
8.3144626 |
J/(mol·K) |
ボルツマン定数  * |
1.3806485×10-23 |
1.380649×10-23 |
J/K |
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この他にも間違いを見つけられましたなら下記へお知らせいただければ幸いです。
最終更新日 : Jan. 12, 2020 訂正:Nov. 1, 2021
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